誰もが知るファッションブランド「アルマーニ」だが、みなさんはどんなイメージをお持ちだろうか?実はもともとジョルジオアルマーニ氏はファッションを志しておらず「医学部の学生」であったこと、「アンコン革命」という言葉を生み出すなどモード界に革新をもたらしたことはアルマーニを知る上で欠かせない要素だ。今回はアルマーニにフォーカスして、イタリアスーツ文化などにも触れながらその魅力を紹介!
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アルマーニとは?
1975年にGIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)氏と建築家のSERGIO GALEOTTI(セルジオ・ガレオッティ)が手を組み、ミラノを拠点に展開を始めたイタリアを代表するファッションブランド。Gianfranco Ferre(ジャンフランコ・フェッレ)、Gianni Versace(ジャンニ・ヴェルサーチ)と並び「ミラノの3G」と言われるほどの確固たる地位を確立するブランドだ。
コンセプトに「素材の良さ」「シルエットの良さ」「着心地の良さ」を追求した機能性重視なデザインを掲げている。また装飾的なデザインや過剰に目立つ配色を行わないクールでダークトーンなブランドイメージを徹底しているため、その一貫性のある姿勢が世間に高く評価されていることでも有名なブランドだ。
モード界の帝王 ジョルジオアルマーニ
1934年7月11日にイタリアのピアチェンツァに生まれ、世間ではMaestro di Maestro(マエストロ・ディ・マエストロ)=「巨匠中の巨匠」「モード界の帝王」「完璧主義者」などと様々な異名を持つほど慕われ、評価されている人物だ。名言などもあり、代表的なのは「私はニセモノが嫌いだ。見せかけの真実は見たくない。」などがある。その哲学にこだわり、流行よりも顧客のニーズを考えた一貫性のあるデザインを展開することで根強い人気を誇る。
ジョルジオアルマーニ氏の意外な経歴とは?
ミラノ大学の医学部にて勉学に励むも、2年次に徴兵により中退を余儀なくされる。その後1957年より有名大型百貨店のLa Rinascente(ラ・リナシェンテ)に就職し、後に紳士服のバイヤーとしてアパレル業界でのキャリアをスタートさせている。当時富裕層の顧客が「もっと着心地の良いスーツは無いものか」と口を揃えて言っていたことから、顧客を満足させるためにはどうすれば良いのかを日々思考を凝らしていたという。
バイヤーの経験を経てからは1965年にNino Cerruti(ニノ・セルッティ)にスカウトされ、「Hitman(ヒットマン)」のデザイナーとして活動して行く。
ジョルジオアルマーニのパートナーは建築家
順調にキャリアを積んでいたARMANIだが、建築家で10歳以上も年が下のSERGIO GALEOTTIとの出会いから独立を促され、1970年にフリーのデザイナーとして活動を始め、後に2人で1万ドルの共同資金により「GIORGIO ARMANI S.p.A.」社を設立する。パートナーにファッション業界人ではなく、建築家を選んだところは非常に興味深い。
<左からSERGIO GALEOTTI(セルジオ・ガレオッティ)氏とGIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)氏>
アルマーニがモード界の帝王と呼ばれるまで
1980年頃には「American Gigolo(アメリカン・ジゴロ)」という映画で衣装提供を行ったことがきっかけでハリウッド業界の俳優に高い支持を得たり、後に詳しく説明するが「アンコン革命」という言葉をつくるほど従来のアパレル業界に衝撃を与える功績を残して行く。また「タイム誌」ではChristian Dior(クリスチャン・ディオール)に続くファッションデザイナーとして表紙を飾り世界的にも注目を集めていた。この頃より「モード界の帝王」と呼ばれ始めている。
デザインはARMANI、マネージメントはGALEOTTIが受け持っていたが、1985年白血病によるGALEOTTIの死別により、ARMANIはしばらくの間途方にくれてしまう。だが時間の経過と共に立ち直り、デザインに留まらずマネージメントまでも一人でこなすほどの成長を遂げており、70歳を越えた現在も活躍をしている人としても尊敬出来る人物だ。
アルマーニが起こした「アンコン革命」とは?
ARMANIの戦略は当時の業界に衝撃を与えている。80年代より映画撮影の際の衣装提供やスポーツ業界のユニフォームを仕立てるなど、人気俳優や人気選手が身につけることで生まれる宣伝効果を誰よりも早く理解していた人物と言われている。その影響からARMANIの洋服はあっという間に話題となっていく。”マーケティングのうまさ”もアルマーニを特徴づける要素のひとつだ。
その広まりの中でも特徴的だったのが「アンコン革命」と言われる「アンコンジャケット」だ。アンコンジャケットとはunconstructed jacket(アンコンストラクテッド・ジャケット)の略で、直訳すると「非・構築的なジャケット」。当時の北イタリアにおいては、ジャケットに肩パッドや芯などを使い身体のラインをカッチリと構築するクラシックなジャケットが主流であった。アンコンジャケットはそのような資材を取り除くことで、より体のラインが柔らかくセクシーに映えるジャケットのことを指す。
アルマーニと南イタリアのアンコンジャケットは起源が違う
スーツ好きな男性ならご存知と思うが、元々アンコンジャケットといえば南イタリアの「ナポリ」が発祥だ。「スーツはナポリ」という言葉があるように、地中海に面した温暖な気候に合わせた限りなく薄い上質生地で、バカンスに来た富裕層に合わせたオーダースーツ(ス・ミズーラ)を仕立ててきた文化は世界一と言える技術を生みだしている。
富裕層がバカンスの為、8月の1ヶ月間だけさっと羽織れるジャケットが欲しいというニーズに応える為に、アンコンジャケットが生まれたというわけである。またナポリならではの型紙に製図を行わず、生地にチャコで直接型を書き込み、仮縫いを重ねて顧客の体型に合わせて行くという仕立て方はよりセクシーで体型に適した服作りを実現している。現在日本でもそのオーダーメイドから発展した既製服のイタリアンアンコンジャケットは注目されている。
一方、ナポリとは逆の北に位置するミラノにてキャリアを積んでいるアルマーニがアンコンジャケットを生み出したきっかけは別にあった。イタリア北部でのスーツの文化はナポリとは違い、英国寄りのクラシックで構築的なジャケットが主流だ。アルマーニは当時その構築的なスーツを身につければ誰でも男らしく体型補正が出来るという考え方に疑問を持っており、スーツに作られた美しい体型よりも、男性の肉体美をそのまま表現出来る服こそが本物ではないかという考え方を持っていた。
mens-folioそのためアルマーニでジャケットを展開する際に、今までのテーラージャケットの構築的な構造を解体して再構築。医学部出身のアルマーニ氏のキャリアになぞらえれば「スーツの解剖」と言えるかもしれない。
アルマーニのスーツは、型を作る資材を取り除き、体のラインに沿うような柔らかくしなやかな生地を使うことで「本当の男性の美しさ」を表現している。気軽に羽織る為に生まれたジャケットと、真の男性美を求めることによって生まれたジャケット。同じ呼び名だがそこには決定的なコンセプトによる違いが現れている。
アルマーニ「クラシックへの挑戦と革命」
ARMANIがキャリアを積んできたミラノではクラシックを重視する要素が多かった。その中で全く新しい発想を作り出すということは、少なからず反感を買ったり批判を受けることがあったようだ。その中で自分を信じて行動することが一番正しいということをアルマーニは理解していた。中田英寿氏との対談でその心意気を語っている。
ジョルジオアルマーニ氏の名言「アルマーニは常にアルマーニなのだ」という言葉が響く。
そのアルマーニから作られた服はどのようなものだろうか。アンコンジャケットの作りに注目してみよう。次の画像はARMANIのアンコンジャケット。
ご覧頂ければわかるように、中に芯などの資材を使わずに生地一枚で仕立て上げられたかのような構造になっている。また内側の凹凸までも極力減らすことで、型紙だけに留まらない着心地の向上を狙ったストイックな姿勢がうかがえる。
このジャケットに関しては装飾が最小限に留められているのも特徴で、ラペルホールまでも廃してしまうなど、ミニマルテイストにこだわったデザインはジョルジオアルマーニの特徴とも言えるだろう。アルマーニのジャケットはぜひ一度手に触れてその素晴らしさを実感することをオススメする。
▶︎「GIORGIO ARMANI アンコンジャケット」の詳細はこちら
ARMANIの代表的ライン紹介
ARMANIには多数のラインが存在し、幅広いニーズに対応している。その中でも代表的なラインを紹介。※2018年の春夏より「アルマーニコレツォーニ」「アルマーニジーンズ」の2ラインが「エンポリオアルマーニ」に統合される模様。
GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)
ARMANIのファーストライン。デザイナーのこだわりを感じ取れるラインだろう。
ARMANI COLLEZIONI(アルマーニ・コレツィオーニ)
ARMANIのディフュージョンライン。主にビジネススーツなどドレスアイテムを中心に展開し、GIORGIO ARMANIよりも抑えられた価格帯で展開。2018年春夏以降から、エンポリオアルマーニのラインと統合される予定だ。
EMPORIO ARMANI(エンポリオ・アルマーニ)
カジュアルからスーツまでトータルで展開するARMANIのセカンドライン。GIORIO ARMANIと比べて2〜3割値段が抑えられていることもあり、一般市場に人気が高い。
EA7(イー・エー・セブン)
イタリア語では「エ・ア・セッテ」と読む。EMPORIO ARMANIのスポーツライン。当初は元・ACミランのAndriy Mykolaiovych Shevchenko(アンドリー・シェフチェンコ)とのコラボレーションから始まったラインで彼の背番号から7が取られている。
ARMANI JEANS(アルマーニ・ジーンズ)
ARMANIのカジュアルライン。ARMANIの中ではイタリア製ジーンズを低価格で生産をしているため、気になる方は一見の価値があるだろう。こちらのラインも2018年春夏よりエンポリオアルマーニと統合する予定の模様。
ARMANI EXCHANGE(アルマーニ・エクスチェンジ)
1991年にスタートし生産拠点をアジアに置いて若年層をターゲットにしたライン。1994年にアルマーニが25%を出資し、シンガポールのOngグループがライセンスを得て展開していたが、2015年には自社直営に。