モッズコート(M-51)と言えば、MA-1やM-65と並ぶ名作ミリタリー系アウターで、その高い防寒性から特に秋冬に重宝するアイテムである。40代男性がモッズコートを格好良く着こなすなら、ファッションアイテムとして根付いた歴史的経緯や位置付けなども理解しておくのが得策だと筆者は考える。今回は、モッズコートコーデにおいて知っておくべき知識や着こなしの具体事例を紹介していく。
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大人なら知っておきたい基本知識「モッズコートスタイルのルーツは、60年代英国の不良カルチャーにあり!!」
モッズコートの基本型は、1950年代〜60年代後半にかけて米国陸軍に採用された野戦用の防寒アウター「PARKA SHELL M-1951(通称M-51)」だ。M-51が、モッズコートと呼ばれるようになった背景には60年代の英国ユースカルチャーが深く関わっている。そして日本のファッション雑誌もちょっとだけ関わっている。
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モッズ(Mods)とは、1950年代後半〜60年代にかけてロンドン近辺の労働階級の若者達の間で流行した音楽やファッションをベースにしたユースカルチャー、あるいはそれに傾倒した人々を指す言葉だ。モッズに傾倒した若者の間では深夜のクラブでダンスや音楽を楽しむ習慣があり、その際の着こなしがファッションスタイルとして確立されていった。ちなみにモッズという言葉の由来はモダンジャズ、あるいは若者たちが自らをモダニストと称したからという説が有力で、モダーンズとも呼ぶ。
そんな彼らの着こなしの基本形は、サイドベンツ仕様の細身の3ボタンスーツ、ボタンダウンシャツに細身ネクタイを合わせたスタイル、もしくはフレッド・ペリーのポロシャツにテーラードジャケットとジーンズとブーツを合わせ、そしてアウターにM-51をコーディネートしたものだった。彼らは何よりも“スーツやジャケットが汚れる”ことを嫌ったため、クラブへの移動にはエンジンがむき出しのモーターサイクルではなくスクーターを積極的に選んだ。不良とは言えどもスーツやジャケットを大切に扱う意識が垣間見えるところが、いかにも英国の男性っぽく面白い。そんな彼らのニーズに、米国軍から払い下げられた機能的かつ廉価なM-51が、ぴったりとはまったという経緯。
以上のような背景があり、「PARKA SHELL M-1951」は、英国では「モッズパーカ」と呼ばれるようになった。モッズのファッションスタイルに目をつけた日本のファッション雑誌の編集者が紙面で紹介する際に「モッズコート」という文言を使い、日本では「モッズコート」という名称が一般的になった。
時は流れて2023年。モッズコートの着こなし本流はキレイめウェアとの組み合わせの妙にあり!?
M-51とスーツやジャケットのようなドレスウェアやポロシャツのようなキレイめウェアと組み合わせたスタイルが定番だったモッズの文脈で着こなしを考えると、ミリタリーアウターのイメージと相反するようなキレイめなアイテムと組み合わせてコーデを組むのが本流と言えるかもしれない。一方で、M-51の根幹をアメリカの服として位置付けるなら、デニムに合わせてアメカジスタイルのベクトルで着こなすのも、もちろんアリ。以下では、筆者が特におすすめしたいコーデと、そのスタイルに推奨するモッズコートを個人的な好みや解釈のフィルターを通して紹介していく。
モッズコート40代の着こなし提案①「大人キレイめスタイルの定番ジャケパンにクラシックなデザインのモッズコートを合わせる」
秋冬の大人の着こなしのなかで、最もキレイめなスタイリングと言えばジャケパンスタイルだ。個人的にモッズコートは、ジャケパンスタイルに非常に良く似合うと思う。私が撮影した下のスナップの男性の場合、中に着込んだタートルネックセーターとパンツが黒で統一されることで、スタイルの良さが際立っているのが印象的だった。また、M-51の定番色オリーブグリーンに合わせるなら、黒は王道中の王道なので、色合わせで迷ったら思い出してほしい。足元にはパラブーツのミカエルをセットしているが、これにより着こなしがドレスに寄りすぎず、モッズコートがいいバランスで溶け込んでいる。
洗練された着こなしをしつつも、ヴィンテージアイテムへのリスペクトがある素敵なあなたには「HOUSTON M-51パーカ モッズコート」
HOUSTON(ヒューストン)と言えば、ユニオントレーディングが展開する日本の定番ミリタリーウェアブランドで、この手のアイテムが好きな男性なら知らない人はいないだろう。そんな同ブランドならではの、本格的な仕様とデザインを兼ね備えたモッズコートをピックアップした。内側に50年代当時の仕様を再現した肌触りの良いアクリルボアのライナーが標準で付属しており、こちらは着脱可能!さらに真冬の着用に向けて防寒性を高めたいなら、シンサレートの別売りライナーが販売されているので購入を視野に入れてほしい。
モッズコート40代の着こなし提案②「カジュアルなスーツやジャケットに、スリム&シンプルなデザインのモッズコートを合わせたシュッとした着こなしは、休日から仕事までオンオフ両用!」
カチッとしたスーツにタイドアップしたドレスシャツを合わせるのも悪くないが、やはりモッズコートがかしこまったビジネスシーンや冠婚葬祭の場にふさわしくないことを考えると、下のスナップの男性の装いのようにいわゆるビジカジスタイルに合わせるが個人的におすすめ。通勤で使うことを考えると、色味はオリーブグリーンよりも、ブラックやグレー、ネイビーが無難だと思う。下のスナップの男性はすごくイケオジ感出てるので、参考推奨。
モダンでスポーティ、さらにオンオフ両用のアウターをお探しのイケオジのあなたには「HERNO Laminar GORE-TEX M-51 ミリタリー モッズコート」
HERNO(ヘルノ)といえば、ムーレーと並んで、イタリアを代表するアウターブランドだ。細身でシンプルなデザインと機能性が魅力。そんな同ブランド随一の人気を誇るLaminarシリーズから、ボディ一体型のフード、大きめのフラップポケット、フィッシュテールといったM-51のデザインエッセンスを随所に感じさせるコートをピックアップした。ヘルノならではのスリムなフィッティングをジャストサイズで楽しむも良し、ワンサイズ上げてヘルノとしてはちょっとだけルーズめのフィットを選ぶのも良いだろう。よっぽどかしこまった場でなければ、ビジネスシーンでも十分に活用できるデザインなので、オンオフ両用で活用したいという男性にもおすすめできる。
モッズコート40代の着こなし提案③「イタカジスタイルに合わせて、ユーロで大人な雰囲気を演出する」
ピッティ・ウォモに参加するヨーロッパの男性と会話していると政治面やメンタリティ面で米国を敬遠する向きもあるが、ファッションアイテムにおいては話が変わってくる。いわゆるアメカジアイテムを取り入れながら、上手にヨーロッパ的なスタイルに落とし込んでいる男性が常に一定割合いる。そんな彼らの共通項は、ドレスウェアやキレイめアイテムとの組み合わせや、色の組み合わせ方、フィッティングにある。下のスナップの男性は、カーゴ仕様ではあるものの結構強めのテーパードがかかった細身の白パンツにジャストフィットの黒カットソーを合わせて、キレイめな印象のコーデに仕上げている。この男性の場合は、①で紹介したようなガチガチにオーセンティックなM-51をドサっと羽織ってギャップを生じさせる上級者的な着こなしが成立しているが、ド直球でこの手のスタイルを組むなら、もう少し身体にフィットするサイズ感を選ぶと着こなしが成功しやすいと思う。
モッズの文脈をなぞりつつも現代的な洗練を求める欲張りなあなたには「FRED PERRY Fur Lined Fishtail Parka」
「FRED PERRY(フレッドペリー)」といえば、名テニスプレイヤーのフレデリック・ジョン・ペリーが引退後の1952年にテニス用のリストバンドの開発を機に、自身の愛称を冠したブランドとして始動した英国を代表する老舗だ。ちなみに創業者は、テニスの腕前だけではなく、端正なルックスと洗練された着こなしが評判だったそう。前述のようにモッズやパンクロッカーから圧倒的な支持を受けたポロシャツに次いで、実はモッズコートが同ブランドを代表する定番品で、毎シーズンリリースされている。ミリタリーアウターならではの良くも悪くも武骨な印象を感じさせず、あくまで品の良いコートに仕上がっているのが特徴だ。プリマロフトを使用した中綿ライナーは着脱可能。しっかりとした背景とストーリーがある英国ブランドである事と、洗練されたデザインを両得したこの一着をこの秋冬アウターの本命候補にしてみては?
モッズコート40代の着こなし提案④「アメカジスタイルに合わせるなら、髪型で男らしさと清潔感を同時に演出する」
モッズコートは、下のスナップの男性のようにジーンズとワークブーツを合わせた、いわゆるアメカジスタイルにも合うが、良くも悪くも土臭くて、男っぽい雰囲気が漂うスタイルになる。バーバースタイルの髪型にヒゲをたくわえて、ラギッドなイメージを打ち出すなら、こんなスタイルもまた良いだろう。この手のスタイルは良い面で言えば硬派、悪い面で言えばかなり怖い印象を与えがち。かと言ってナンパで若作りした髪型等は、このような着こなしに似合わないと思うので、下の男性のようにバーバー系の短髪ヘアスタイルをコームでキレイに後ろに流し、髭もトリマーで短めに整えて、できれば顔にBBクリームを塗って、清潔感を出すのが個人的にはおすすめだ。
モッズコートはやっぱり米国のミリタリーウェアブランドでしょ!という硬派なあなたには「ROTHCO M-51 FISHTAIL PARKA」
1953年にアメリカの東海岸のマンハッタン発のミリタリー製品メーカー「ROTHCO(ロスコ)」は、当初より米陸海軍にミリタリー製品を供給してきた。軍関係の製品に限らず、警察官の制服やセキュリティ用品なども展開している。60年代当時のモッズの若者たちが、米国軍のサープラス品のM-51を主に着用していたことを考えると、やっぱりモッズコートはアメブラという考え方をする方も少なからずいらっしゃると思う。米国メーカーのオーセンティックな品をお探しの方におすすめしたい。
以上で紹介した着こなし以外にも、ヒントになる着こなしがあると思うのでぜひ、以下のギャラリーや、モッズコートに関するその他の記事をぜひチェックしてみてほしい。