スイッチの切り替えが難しいリモートワークにおいて集中力を高めるため、はたまた自粛疲れの心身を癒すためのツールとしてなど、様々な用途で使われるようになった“香水”。コロナ禍以前は周囲への配慮、あるいは好印象を与えるための手法としての側面が強かったが、現在では“自分自身のために香りをまとう”という考え方が急速に拡がっているようだ。香水をまとう理由のベクトルがいずれに向かっているにせよ、香水選びの難しさ、悩ましさに変わりはない。今回は香水選びの精度を上げるための指標として理解しておきたい「香水の種類」を解説していく。※監修者はアイテムの選定に関わっておりません。
1991年、千葉県生まれ。大学卒業後、外資系コンサルティング会社で働きながら、独立調香師に師事し調香を習得。2020年にオーダーメイド香水ブランド『リベルタパフューム』を立ち上げ“香りの民主化”を掲げる。調香師、ブランドディレクターに加え、数百本の香水コレクションを持つ生粋の香水マニアでもある。
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香水の種類①「パルファン(パルファム)」
Parfum(パルファン)とは、フランス語で「香水」を意味する言葉。香水の種類の中ではもっとも濃度が高く、少量でも十分に香り、かつ持続性にも優れているのが特徴だ。また、濃度が高いことからフランス語で「エキス(抽出物)」を意味するExtrait(エクストレ)とも呼ぶ。一般的にどのブランドも“パルファム”と名付けた香水にグレードの高い原料・香料を用いることが多いことから、ブランドの最上級フレグランスに位置付けられる傾向がある。香料含有量が高く、アルコール濃度が低いため拡散性も抑えられており、トワレのように遠くまで香りが漂うことは無いが、至近距離で長く香る特質を持つ。また近年では、希釈をせず、ほぼ香料だけで作られた製品も市場に増えている。
賦香率 | アルコール希釈率 | 持続時間 |
約15~25% | 約70~85% | 約12~24時間 |
おすすめのパルファン「HEELEY(ヒーリー) AGARWOUD」
熱帯雨林に生息する、希少な樹脂から抽出した沈香(ウード)を用いている「アガーウッド」。ウードとは古くから仏教寺院においての祈祷の際に使われていたもので、重厚感のある甘い香りが特徴だ。そこにローズやフローラル系の香料を混ぜることで、重厚すぎずカジュアルすぎない香りに仕上げている点はさすがの一言。香りの持続性こそ長いが、香り立ちは穏やかなので、周囲に“なんとなく良い匂いがする”という印象を与えられることうけあいだ。
おすすめのパルファン「BYREDO(バイレード) TOBACCO MANDARIN」
ヨーロッパとアフリカの文化が交差する、モロッコ・タンジールの風景に着想を得たフレグランス「タバコ マンダリン」。昼と夜、という対比をイメージさせる香りを表現しているのが特徴だ。プッシュすると、まずシトラスやスパイスが立ち上り、徐々にマンダリンやコリアンダーが顔を出して“昼”を想起させる。ミドルではタバコやレザーといったスモーキーな香りが“夜”を表現。その複雑かつ非現実的な香りがクセになると、香水マニアから太鼓判を押されている香水だ。
香水の種類②「オードパルファン(オーデパルファン)」
パルファンに次いで濃度が高いのがEau de Parfum(オードパルファン)だ。Parfum de Toilette(パルファムドトワレ)とも呼ばれ、略してEDPやPDTとも表記される。パルファンと比較してエタノールの含有量が高く拡散性があるため、少量を点でつけるパルファンとは異なり、オードパルファンはスプレータイプで霧を面でまとうように使うのが主流だ。香りのタイプにもよるが、半日ほど香る持続性が長いものも存在する。また、パルファンと比較すると手の出しやすい価格帯になっているが、同名の香水であっても、パルファンとオードパルファンでは香り立ちに違いを感じる場合が多い。ちなみに、“Eau(オー)”とはフランス語で“水”という意味を持つ。
賦香率 | アルコール希釈率 | 持続時間 |
約10~15% | 約80% | 約5~12時間 |
おすすめのオードパルファン「PENHALIGONS(ペンハリガン) The Inimitable William」
「ペンハリガン」の創業者であるウィリアム・ペンハリガンをモチーフとした、気品と自信に満ち溢れた香りのフレグランス。プッシュするやいなやベルガモットの爽やかさが広がり、徐々にベチバーやタバコのようなスモーキーな香りに包まれる。そしてミドルではインセンスやシダーウッドといった温かみのあるオリエンタル調へと変化し、ラストではセクシーなアンブロックスが優しく漂う。ちなみにアンブロックスの香りの持続性は長く、環境にもよるが12時間ほど続くので、匂いが長持ちする香水をお探しの方にもオススメだ。
おすすめのオードパルファン「Dior(ディオール) SAUVAGE EDP」
2018年に発売されたばかりながら、すでに「ディオール」を代表するメンズフレグランスとして確固たる地位を確立している「ソヴァージュ」。香り立ちはベルガモットの爽やかな匂いだが、付けてから10分ほどでバニラやウッディーといった重厚感ある香りが漂い、大人の色気を演出する。その爽やかさと甘さの絶妙なバランス感が心地よく、万人ウケが狙えることから巷では“モテ香水”と呼ばれることも。ちなみに、若干香りは異なるが、パルファンやオーデトワレのソヴァージュも存在するので、お好みの賦香率や拡散性に合わせて選んでみるのもアリだろう。
おすすめのオードパルファン「LIBERTA Perfume(リベルタパフューム) Aromatic」
“香りの民主化”を掲げる、日本発のパーソナライズ香水ブランドである「リベルタパフューム」。同ブランドの独自のアルゴリズムによって導く“パーソナルコレクション”の中でも、オールシーズン活躍が期待できるのが「アロマティック」だ。ブルガリア産の最高級のラベンダーとローズマリーの精油を使った現代的なフゼアアコードは、気持ちをリフレッシュさせてくれるような清潔感と癒しを与える香り。リラックスしたい時、気持ちを上向きにしたい時、集中力を高めたい時など、あらゆる場面で使えるアロマティックを備えておけば憂いなしだ。
香水の種類③「オードトワレ(オーデトワレ)」
メンズ・レディースを問わず香水の種類でもっとも多いのがEau de Toilette(オードトワレ)。オーデパルファンよりも香りの濃度が薄く、さりげなく香らせるのに好適で、香水をつけ慣れていない方、もしくは普段使いに向いている香水をお探しの方におすすめの種類だ。パルファンやオーデパルファンは1プッシュでも十分に香るが、オーデトワレは2~4プッシュ程度がちょうど良いとされている。とはいえ付け過ぎると匂いがキツくなりがちなので要注意。また、大体4~5時間程度で匂いが消えることも覚えておきたい。
賦香率 | アルコール希釈率 | 持続時間 |
約5~10% | 約80% | 約4~5時間 |
おすすめのオードトワレ「Maison Margiela(メゾン マルジェラ) Jazz Club」
「メゾン マルジェラ」の香水というと、シャボン系フレグランスの「レイジーサンデーモーニング」があまりにも有名だが、他にも名香が揃っている。たとえば、ニューヨークの中心地に潜む「ジャズクラブ」をイメージしたこちらの一本。ほんのり甘いウィスキーの奥にタバコの匂いが見え隠れし、時間の経過とともにバニラやシナモンがスパイスのように香る。“ダンディ”という言葉が相応しいと思えるほど、大人の余裕さと色気を感じさせる匂いなので、ここぞという時の香水をお探しの方にぜひレコメンドしたい。
おすすめのオードトワレ「HERMES(エルメス) ナイルの庭」
ナイル川流域の川面に浮かぶ島をモチーフにして作られた「ナイルの庭」は、グリーン系の香水の名作と言われる一本。つけた瞬間に柑橘系の酸味と若いマンゴーの甘さが香り立ち、ロータスフラワーのみずみずしい花の香りがフレッシュさを演出する。ミドル、ラストではウッディをベースとした森の中のような香りがほのかに漂う。全体的にクセがないため日常使いしやすく、かつジェンダーレスで使えるのも魅力的。「エルメス」というと少々お高いイメージもあるが、意外と手の出しやすい価格なのも嬉しい限りだ。
香水の種類④「オーデコロン」
香料の含有率が低めのEau de Cologne(オーデコロン)ことEDCは、初めての香水としておすすめの種類だ。自然な香りを意識した軽い付け心地のものが多く、遠くまで香るものの匂い自体のキツさがないため、デオドラントのように使われることも多い。ちなみに、オーデコロンは“ケルンの水”というのが本来の意味で、ナポレオン時代にドイツ・ケルンで売り出された薄めの香水が起源と言われている。
賦香率 | アルコール希釈率 | 持続時間 |
3~5% | 約80% | 1~2時間程度 |
おすすめのオーデコロン「4711(フォーセブンイレブン) オリジナル オーデコロン」
1792年にドイツ・ケルンで誕生した「4711」は、かのナポレオンが愛用したオーデコロンとして知られている。またオーデコロンの誕生には諸説あるが、4711は世界最古のオーデコロンとしてよく名前が挙がるブランドだ。古き良きスプラッシュボトルになっていて、手のひらに適量を出してから、肌に塗り込んでいくタイプになっている。肝心の香りはシトラス系とフローラル系で構成されており、清潔感と爽やかを兼ね備えていて、世界中の人に200年以上愛されてきたことが納得できる仕上がり。香り飛びが早い分、匂いの変化も早いので、疲れた時やリフレッシュしたい時に最適だ。
おすすめのオーデコロン「Jo Malone London(ジョー マローン ロンドン) English Pear & Freesia Cologne」
「ジョー マローン ロンドン」の不動の人気No.1である「イングリッシュ ペアー&フリージア」は、もぎたての果実を思わせるフレッシュさとフリージアの高貴な芳香が特徴の一本。中性的な香りなので男女問わず愛用者が多く、香水が苦手な人でも纏いやすい香り、と評判を呼んでいる。また、香水は季節によって使い分けるのが基本だが、どの季節にも対応できる香りなので、活躍するシーンは多いだろう。
香水の種類⑤「オーデサントゥール」
敏感肌の方や子供が気兼ねなく使えるように誕生したのがアルコール不使用のEau de Senteur(オーデサントゥール)だ。日本ではあまり馴染みのない香水のタイプだが、ヨーロッパではポピュラーとされ、子供への贈り物としても親しまれている。アルコールが含まれていないことに加え、香料の含有率も低めになっており、非常にほのかな香り立ちかつ持続時間は1時間ほどと短め。そのためリフレッシュ目的やルームフレグランスとして利用する人も多い。
賦香率 | アルコール希釈率 | 持続時間 |
1~3% | – | ~1時間程度 |
おすすめのオーデサントゥール「Givenchy(ジバンシィ) Ptisenbon」
「プチサンボン」はフランスを代表するメゾンブランドの一つである「ジバンシィ」と、子供服ブランドである「Tartine et Chocolat(タルティーヌ エ ショコラ)」のコラボレーションフレグランス。清潔感と透明感のあるシャボン系フレグランスで、年齢・性別を問わずウケが狙える香りが特徴的だ。通常はオードトワレだが、アルコールフリーのオーデサントゥールも展開されている。どんなシーンにも使える香水なので一本持っていても損はないだろう。
おすすめのオーデサントゥール「SINN PURETE(シン ピュルテ) Purification of Mind」
日本発のオーガニックコスメブランドである「シン ピュルテ」の大人気フレグランス。頭や心をリセットし、感性に働きかけるマインドフルフレグランスとして作られており、リラックスしたいときにはもちろん、ルームミストやピローミストとしても使える汎用性の高さがウリ。3種類ほど展開しているが、その中でもおすすめなのは「パリフィケーション オブ マインド」。美しい大自然の中をイメージした、心を落ち着かせる香りが特徴的だ。